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誰も知らない/ Nobody knows

近所のBlockbusterになんとなしに寄ってみたらおいてあったので借りてみた。淡々とした生活の描写が痛々しくもあるけど、それ自体への肯定も否定も無い。そのおかげで映画そのものは詩的にながれ、まるで体言止のように終わる。絶望の中にも空を飛ぶ飛行機や育ち続ける草花や冗談や遊びなどの美しい瞬間はあるだろう、でももしそうならば程度の差こそあれ私のようないわゆる普通の生活をしている(と思っている)人々と彼らの間には経済的な差の他に何があるのだろう?誰もがある程度は閉じた社会の中でほとんど変わらない日常を毎日送っている。それでもほんのささやかな楽しみのいくつかがそんな人生を生きるに値するものにしているとするなら、根本的にはあまり差が無いんじゃないか。だからこそこの映画で善悪の判定がなされずまるでそんな日々が続いてゆくような終わり方というのは悲しくて、とてもいい。
そんなことを思って福岡の一家監禁殺害事件を思い出した。もちろんこの映画の元になった事件も実際はもっと陰惨な様相を呈しているわけだけど、そこには幼いがための愚かさやどうしようもなさのせいであって、純然たる悪意はあまり感じられないように思う。それに対して福岡の監禁殺害は悪意の塊なんだけどそれですら日常と化すことができていたのかもしれなく、そこにすら相対的には美しく穏やかな瞬間があったりしたのかもしれない(だからといって事件のおぞましさが変わるわけではないが)と考えると恐ろしい。そういえば、人間はどんなことにでも慣れることができるとドストエフスキーさんが言っていました。

誰も知らない
誰も知らない
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5 生きる権利
5 ともすると誤解されがちですが、
5 世間のすきまにある愛情

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