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思い出

治は余り他人の気持ちを思いやる事ができない。その時面白ければいいんじゃないか、と思ってやった事を後になって後悔する事も良くある。

その昔、こんなことがあった。
大学生の時には余り金もなく、飲み物を買ったりするのも好きな時に好きなだけとはいかなかった。なので誰かがジュースやなんやらを飲んでいるのを見かけると「ちょっとくれー」だの「一口だけ一口だけ」なんか言って、要はたかっていたりしたのだ。こんなことは挨拶がわりのように誰でもやっている類のことで、まあたいしたことでは無かった。
それでは、というわけでも無いのだがある日治はこれを少しアレンジしてみたのだった。その日は夏休みだったけれどもサークルの集まりで学校に行っていて、治は一人の後輩がアップルティーソーダを飲んでいるのを見つけた。アップルティーソーダは缶入りではなく、紙コップに入っていてストローで飲む形で提供されていた。

「ちょっとくれよ〜」「え〜嫌ですよ」などとのやり取りの後、「じゃあ少しだけですよ」といわれた治は先輩風をふかしてアップルティーソーダを飲んだ。「もう返してくださいよ」という後輩を気にせず飲み続けていると、やがて「いい加減にしてくださいよ」と、その後輩が怒り始めた。

「アップルティーソーダ程度で何を怒っているのか」と考えた治は次の行動に出た。ストローからアップルティーソーダを吸うのではなく、アップルティーソーダに空気をブクブクブクと送り込んだのだ。

「減らないからいいじゃん」と治は涼しげに言った。治はこの時大学二年生、20才になろうとしていたのだった。